第11章 ターニング
すらりとした手が私の顎をなぞると上向かせられた。
顔に影が落ち、彼の顔が近づいてくる。
その距離あと数センチ、というところで、クジャはふと思い出したように顔を離した。
「そういえば、もう一つプレゼントがあったのを忘れていた」
「……ネックレスの他にも何かあるの?」
「ああ、君の名前を決めていなかったよね。だから決めようと思っていたんだ」
…………
……え、名前?
「美しい君に似合うものがいい。僕のなかでは色々候補があるんだけど。サラ、ミア、エヴァ……アリア、レイラなんかもいいと思うんだけど、どれも君の美しさにはかなわないかな。他には……」
「え、待って、クジャ、ちょっとストップ!」
「今言った中に気にいったものがあったかい?」
「そうじゃなくて、気に入ったとかじゃなくて……あの、私自分の名前あるんだけど」
クジャはわからないというように、首を傾げた。
血の気がひく。
「あの、クジャ、ごめん、私今日は部屋に戻る」
「具合が悪くなってしまったかな? 長く歩かせすぎたね、ごめん気づかなくて。名前はまた今度決めることにして、今日は部屋に戻ろう」
私の身を案じるように肩を抱こうとしたクジャの手をすり抜けて、元来た道へ足を早める。
後ろで足音が止まった。
そのことに知らないふりをして早足で歩いていると、慌てたように固い靴音が追いかけてきた。