第11章 ターニング
「クジャに会うのは久しぶりだよね」
「しばらくリンドブルムの方に行っていたからね」
そっか……。
ブラネ女王はリンドブルムに侵攻したって言ってたから、それでクジャもリンドブルムに行っていたのかな。
「クジャは……どうしてブラネ女王の味方をするの? ブラネ女王は国の女王だから、領土を増やしたいのかなとかわかるけど……クジャには何も得はないでしょ?」
「たしかに僕はこの大陸のことに興味はない」
「だったら……」
「僕が興味があるのは宝石さ」
「……え? 宝石?」
予想の斜め上をいく回答に、私は変な声を出してしまった。
宝石?
財力がほしいってこと?
「この星には召喚獣という巨大な力があることは前にも説明したね」
こくりと頷くと、クジャは言葉をつづけた。
「召喚獣の中でも特に力の強い、アレクサンダーという召喚獣がいる。召喚獣を召喚するには呼応する石が必要なんだけど、大きすぎるアレクサンダーの力を恐れた古来の人間はアレクサンダーの石を割ってそれぞれの国で保管することにしたんだ」
そんな石があったんだ。
そこで私は、ダガーが家出をするときに持ち出したペンダントの存在を思い出した。
あれは国宝だって言っていたけど、もしかしてあれがクジャのいう石だったりしたのかな。
「僕は力を手に入れたい、ガーランドを超えるほどの力を……」
「クジャ……?」
虚空を見据えるクジャが、どこか遠く深い場所にいってしまうように感じて、私は思わず彼の手を握った。
握った手はクジャにしては熱く、彼の思いがそれだけ強いのだろうなと感じ取れた。
どこか焦点の合わなかったクジャの瞳が、握った手を介して私の方に向けられる。
感情の読み取れない瞳は、すぐに先ほどまでのような愛しみの込められた瞳に戻る。
そして、握っていない手が再び私の頭に伸びてきた。
「君は僕のそばにいるだけでいい」
さらりと髪をすいた手は、そのまま流れるように腰にあてがわれ、そっと体を引き寄せられた。
「君だけは、ずっと僕のそばに……」
その言葉は弱々しかった。
まるで私にすがりつくように、でも控えめに私を抱き込む。
かける言葉を見つけられず、私はただクジャの腕の中で黙っていることしかできなかった。