第11章 ターニング
「ん……」
「あ、ユウ、起きた?」
「…………」
サウスに手伝ってもらって私のベッドに寝かせていたユウが、意識を取り戻したらしい。
「体調大丈夫そう?」
「たいちょう……?」
分からないというように、ユウは小首をかしげる。
「えーっと……体がこう、だるかったりしない?」
ジェスチャーで伝えようと体をだらんとさせてみると、どうやらニュアンスが伝わったらしくユウは首を横に振った。
とりあえず体の調子は悪くないみたいでよかった。
それからいくつか質問をしてみるけど、ユウから返ってくる反応はのれんに腕押し状態。
「私のこと、わかる?」
自分の方を指さした私をじっと見たユウは、さっきから繰り返している首を振る緩慢な動きをまたする。
うーん。
ずっと一緒にいたはずの私のことがわからないってことは、今までの記憶がすっぽりなくなっちゃったのかな?
それは少々残念なことである。
ふと、クジャが黒魔導士達のことを人形と揶揄していたことを思い出す。
記憶がなくなった……のではなくて、記憶自体が今までなかった?
とある拍子に、今回はそれがポテチだったけど、人格が生まれた。
そう考えるのはどうだろうか。
「あ、そうだ、ポテチ! ユウ、これはわかる?」
まだ数枚残していたポテチの存在を思い出して、私はテーブルの上に置いたままにしていたお皿を手に取る。
ユウがぴくりと背筋をのばした。
「これ……」
じっとユウの視線がお皿の上のポテトチップスにそそがれる。
とんがり帽子の下の暗闇からごくりという音が聞こえた気がした。
「……これ、たべてもいい?」
「もちろん」
つまんだポテトチップスを口に運ぶと、ユウは驚いたように瞳を震わせ、それからバクバクとお皿の上に残っていた数枚をたいらげてしまった。
「あ……」
空になったお皿を見て、ユウが悲しそうな声を出す。
彼がそこまでポテチを気に入るとは思わなかった。
まあポテチは魔性の食べ物だからね。
気持ちはわかる。
「大丈夫、また作れば食べれるから」
私がそう声をかけると、ユウは嬉しそうに顔をあげた。