第11章 ターニング
思わず部屋をきょろきょろ。
いつものように部屋には私とユウとサウスだけ。
「え、今ユウが喋ったの?」
顔を覗き込むようにしてみると、ユウは帽子の下の暗闇の中でこれでもかというくらい金色の瞳を瞬かせていた。
その様子は、自分の行動に自分で驚いているかのよう。
ユウが今喋ったんだよね?
「え、嘘……ほんとに?」
思わず嬉しさがふわっと湧き出てくるけど、私がその気持ちを楽しんでいる暇はなかった。
ぽとっとかじりかけのポテトチップスが落ちたのを皮切りにユウが叫び声をあげ始めたから。
「うわあああああああああ!!」
「ちょ、ユウ落ちついて、うわあ、あぶない!」
突然の行動に驚きつつ、なんとかユウを落ちつかせようと近づくと、あろうことかユウの手のひらから炎の球が広がった。
ちょ、本当に危ないって!
ていうかサウスもいつもみたいにぼけっとしてないで、止めるの手伝ってよ!
そうとう混乱しているのか、手のひらから放たれた魔法によって部屋の家具がちょっと燃えてる。
あああ、クジャの揃えたおしゃれな家具から黒い煙が……!
「もう、落ちついてってば!」
ベッドから布団をひっぺがすと、混乱状態のユウの上にバサッとかけてやる。
しばらく毛布の中で塊がじたばたしていたけど、しばらくするとぴたりとやんだ。
やっと落ち着いてくれたかな?
おそるおそる近づいて、ゆっくり毛布をめくってみると、ユウはぴくりとも動かずその場に倒れていた。
「ユウ……ユウ、大丈夫?」
とんとん、とユウの肩を軽くたたいてみると、わずかにだけど寝息が聞こえてきた。
「…………寝た?」
はあああ、と私は止めていた息を吐きだした。
「もう、びっくりしたああ、心臓に悪いよ……」
安心したからか力が抜けてその場にへたりこむ。
ユウは先ほどの猛獣のごとき様相が嘘のようにすやすやと眠っている。
黒魔導士の二人は魔法が使えるんだろうなとは思ってたけど、こんなタイミングで知ることになるとは……。
寿命が縮んだ気がする。
でも。
ユウが喋った。
ぱたりと糸が切れるように眠ってしまって心配に思う気持ちがありつつ、少し嬉しく思う私もいた。
「……ポテチのせいなのかな?」
きっとそうだ。
やっぱりポテチには魔性の魅力がある。