第11章 ターニング
それは、ユウのグローブを脱がせて黒魔導士の体の秘密をあばこうとしていたときのこと。
「ポテチ食べたい」
急に何かが食べたくなるときってあるよね。
夜中勉強してたら無性にラーメン食べたくなったり。
いつもはそうでもないのに、無性にモンブランを食べたくなったり。
え、めっちゃポテチ食べたい。
さっき食後のデザートに甘いゼリーみたいなものを食べたからかな。
舌がしょっぱいものを欲してる。
「ユウ、あのね作ってほしいものがあるんだけど」
椅子に座った状態のユウに、ほとんど覆いかぶさるようにしていた私は思いついたまま言ってみることにした。
最近ユウとサウスには色々お願いしてばっかりいるような気がするけど、部屋から出してもらえないことの代わりだと勝手に許してもらうことにしている。
この世界にじゃがいもはないけど、似たようなイモ類はたしかあったはず。
私の下手な説明で伝わるかな。
「イモをね、薄くスライスして高熱で揚げた食べ物なんだけど…………とにかく薄くスライスするのがコツでね!」
さっきまでグローブを脱がす脱がさないの攻防を繰り広げていたユウは、私の説明を聞いて目をぱちくりと瞬かせた。
私が脈絡なく調理方法を説明し始めたから困っているのかもしれない。
気分屋でごめんよ。
私の必死の説明で理解してもらえたかはわからないけど、ユウは控えめに頷くと部屋を出ていった。
それから待つこと数十分。
小ぶりなお皿を手にしたユウが戻ってくる。
そこには見事なまでの黄金色のひらひらがあった。
「すごいよユウ、見た目は完璧だよ!」
期待に胸が膨らむ。
つかんだ一枚をおそるおそる口に運ぶと、パリッとポテチ特有の音がした。
「おいし~、これこれ。塩の量もほどよい! うま~!」
すごい、これはまさしく私の求めてたポテチ!
「ユウも食べてみて! すっごく美味しいから!」
久しぶりにポテチを食べれた感動に隣に立っていたユウにも進めると、おずおずといった様子でポテチを口にする。
「ね、美味しくない?」
「……………………おいしい」
「…………ん?」
今かすかに声が聞こえたような。
ユウを見ると呆然といった感じで手に持ったかじりかけのポテチを見つめている。
え、今ユウが喋った……?