第11章 ターニング
実は私、この場所がよくわかってないんだよね。
目覚めてすぐ、この部屋に来るときに廊下を少し見たけどそれっきりで。
お風呂もトイレも完備されているこの部屋はなんでもそろっていて、この部屋から出たことがない。
私を閉じ込める目的でクジャはこの部屋を使わせているんだろうけど。
今の私は軟禁状態に近い。
そもそもここはどこなんだろう。
アレクサンドリア領なのか、リンドブルム領なのか。
はたまたブルメシア領?
建物の外を見ることができれば何か分かるかも知れないけど、部屋からでることはできない現状。
まあこの世界に疎い私では何も分からない可能性も高いんだけど。
とにかく今は情報が足りない。
本当はクジャと色々話して色々聞きたいところなんだけど、クジャも色々やることがあるのか、たまにしか私のところにきてくれないし。
だからといって、こうしてベッドの上でずっとごろごろしていても時間の無駄だし。
「うーん」
ごろごろ、ごろごろ。
ベッドがとてもふかふかである。
じゃなくて。
部屋からでなくて、今できること。
「うーん」
二人に頼めば、物を持ってきてもらうことはできるんだよね。
情報……持ってきてもらう……。
「あ、そうだ、思いついた」
ふと思いついて黒魔導士の二人にあることをお願いすることにした。
私のお願いを聞いて部屋を出ていったサウスは、だいぶ時間がたってから戻ってきた。
その両腕には数冊の分厚い本。
”この家にあるいい感じの本を数冊持ってきて”
これをお願いした理由は、単純にクジャが来るまでの暇つぶしがしたいっていうのもあるけど。
もう一つ大きな理由がある。
たぶんここはクジャの家じゃないかと私は思っているんだけど。
たいていの場合、自分の興味のない本は手もに置かないと思う。
つまりこの家にある本を見ればクジャの考えが分かるのではないか、というなかなか冴えた発想だ。
「サウス、持ってきてくれてありがと。さーて………………」
テーブルに置かれた本たちに視線を落として、私は言葉を失う。
「そうだ、私、この世界の文字読めないじゃん」
持ってきてもらった本をパラパラとめくってみるけど、象形文字のような羅列が目線をすべっていく。
部屋に大きなため息がひとつ、こだました。