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王女様に祝福を【FFIX】

第1章 はじまり


 

あの嫌な浮遊感がなくなって、私はぎゅっと瞑っていた目を開けた。

 
私、生きてる……?



いや、死んでる。

視界に映る石材の床。

内臓をぶちまけ、悲惨な状態で潰れている私が目の前に倒れていた。

 
ああ、私、死んだんだ。


今は意識体にでもなって、空から死んだ自分の姿を見ているのだろう。

死んだ後のことはよく知らないけど、幽霊ってそういうものかなってイメージがなんとなくある。

現実味を帯びていない光景を目の前にしているからか、やけに冷静にそんなことを考える。

 
だけどそこで気づく。

さっきぶつかりそうになった人が見当たらなかった。
 
私の死体と一緒に潰れてもない。


……どういうこと?

ぶつかる瞬間までいたと思ってたけど。

まあ、よけてもらえたなら、それに越したことはない。
 

その時、ガシャガシャと何者かが近づいて来る音がした。
 

「姫さま〜、ご無事でありますか〜」
 

現れた人物は、まるでブリキのおもちゃのような格好をしていた。

それに聞き慣れない言葉遣い。

古風すぎてちょっと笑っちゃうかも。


「ややっ! これはいったい」

 
私の死体を見てブリキの兵隊さんは剣を抜いた。
 
まあそれ、私の死体なんだけどね。

 
「私の死体なんだけどね」
 
「姫さま、言葉遣いが……いや、これを見て動揺されているのであろう」
 

そう呟き、私を部屋へと導いた。


「ささ、どうぞゆっくり休んでくだされ」
 

……どういうことだろう。

なぜかこの初めて会った兵隊は私のことを姫さまと呼び、やけに豪華なベッドに寝かせてくる。

彼が部屋から出て行ったのを確認すると、私はムクリと起き上がった。
 

どういうことだろう。

手を握って開いてする。

意識体だと思っていた私には、実体があるらしい。

 
部屋に前身鏡があったのでそこを覗き込んで、私はとてつもなく驚いた。
 

鏡の中にとんでもない美少女がいる。

長い黒髪は艶やかで、羨ましいほど。
 
しかも私の動きに合わせて動いている。
 
私は頬を抓ってみた。

痛い。


それに鏡の中の美少女も頬を抓っている。

ほっぺを引っ張っても可愛いってどういうことだ。
 

私はふらふらとベッドまで歩いていくと布団に潜り込み、そのままふて寝した。
 



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