第11章 ターニング
朝起きると食事の用意がされていた。
朝といっても、この部屋には窓がないので正確な時間はわからないけど。
扉の両脇には相変わらず黒魔導士の二人。
朝食はこの二人が用意してくれたのだろうか。
「美味しかったです、ごちそうさまでした」
私が手を合わせてごちそうさまをすると、扉の左にいた黒魔導士が空になった食器を持って外に出ていった。
それからすぐに、小ぶりなおぼんに乗ったお茶セットを持って戻ってくる。
ガラスのティーカップに香り高い紅茶を注ぐと、再び扉脇の定位置に帰る。
なんだかプログラムされた機械みたい。
見た目はビビと似てるけど、ビビとは全然これっぽっちも似てないね。
「あっ!」
思い出した!
ずっとどこかで見たことある気がするなあ、って思ってたけど、わかった。
この二人はビビと同じ種族って言えるくらい似ているけど、体の大きさや服、トレードマークともいえるとんがり帽子がビビとは少し違う。
ダリ村で作られてた人形と全く一緒だ。
やっぱりダリ村で作らせてたのはクジャだったんだ……。
ぼんやりとした考えはどんどんと膨れ上がっていく。
それは、クジャが助けてくれるって言ってくれて、一度見ないふりをした懸念。
どうしてクジャは黒魔導士を作っているんだろう。
私はダリ村で襲ってきた黒のワルツを思い出す。
人を人とも思わず容赦なく攻撃を仕掛けてきた。
きっとクジャは黒魔導士を戦争の道具にするつもりなんだ。
ブラネ女王はクジャから黒魔導士をもらって、他国に侵攻をしている。
結局、ダガーの悩みの元凶はクジャ……。
はらりと視界に銀糸のような髪が映った。
心臓がどくりと脈打つ。
震える足で鏡の前にいくと、クジャと瓜二つな少女がそこにはいた。
こんなのクジャの仲間ですって言ってるようなものじゃん。
私クジャ側の人間になっちゃったんだ。
ダガーやジタン達の敵になっちゃった。
どうしよう。
考えなしにクジャの甘い誘惑にのってしまったせいだ。
「私とんでもないことしちゃったのかな……」
悪魔の契約書にサインしてしまったのではないだろうか。
ダガー、ごめんなさい。
私どうすれば……。
こんな時でもダガーに頼ってしまう自分に嫌気が差した。