第11章 ターニング
改めて部屋を見渡してみる。
全体的に白で統一されたシックな家具が多い。
そのなかで薄ピンクのシーツをまとったベッドはさながら一輪の花を彷彿とさせる。
「この二体は君のお世話係だ。何か用があったら遠慮なく命令していい」
この部屋唯一の出入り口である扉の両脇に仁王立ちしている黒魔導士二人。
濃紺のジャケットに白いズボン手袋にブーツ。
頭には特徴的なとんがり帽子があり、帽子のつば下からは感情が読み取れない二つの光がのぞいている。
さっきお風呂に入れてくれた二人の黒魔導士がお世話係を引き継いでやってくれるみたいだ。
試しにこんにちはと話しかけてみたけど、二人とも無反応。
これはあれだね、カーゴシップの黒魔導士たちと同じで喋ってくれないパターンの子達だね。
「名前はなんていうの?」
「名前?」
これからお世話になる二人だ。
呼び名くらい聞いておこうとクジャに尋ねると、クジャは不思議そうに首を傾げた。
「名前なんてないよ。彼らは人形だからね。人形にいちいち名前なんてつけてられないだろう」
「そんな……」
人形だなんて……そんな言い方しなくたっていいのに。
私が何か言いたげな顔をしていたのか、クジャが投げやりに返答してくる。
「どうしても呼び名がほしいなら君がつけてあげるといい。さあ今日は色々あって疲れただろう。ゆっくりおやすみ」
クジャが出ていった扉の両脇にピクリともせず立ったままでいる二人を見る。
見た目が全く一緒で私には見分けがつかない。
私に名前をつけろって言われても……。
「うーん、何て呼ぼうかな」
見た目に何か特徴があったらそれを文字って呼ぶんだけど、こうも同じだとなあ。
「まあそのうち思いついたらでいっか。これからよろしくね」
ひとり言のようにおやすみと呟くと、さすがに色々あって疲れていたのか、私は布団の中にもぐりこむとすぐに寝てしまった。