第11章 ターニング
がんと開いていた目をさらにくわっと見開いたクジャは、もだえるように自分の顔を手でおおった。
なんだなんだ。
動きがいちいち俊敏でびっくりするからやめてくれよ。
ふと周りを取り囲んでいたガラス板に映った自分と目が合った。
青い瞳。
瞳を縁取る色素の薄いまつげは長く、伏目がちになると非常に可憐な印象をうける。
鼻も口もきゅっと小さくあるべき場所におさまっている。
控えめに言ってかわいい。
控えないで言うと、こんな子に数秒見つめられたら女の私でも天に召されてしまいそうなくらいの天使級のかわいさ。
え、もしかしてこれがクジャの用意した新しい体?
とんでもなくかわいいんですけど。
でも……
私は目の前でいまだに悶えているクジャとガラスに映る自分を見比べて……非常にげんなりした。
用意してくれた体の見た目が、どことなくクジャに似ているのだ。
顔の印象はもちろん、決定的なのは髪の色と瞳の色が全く同じであること。
ガラスに映る私の髪は長くつややかで、銀髪が濡れて体にまとわりついているのが神聖なほど美しい。
見た目美しいのはいいけど、ぱっと見クジャの妹ですかって思うくらい似てる。
「美しい」を呟き続ける機械と化しているクジャに視線を戻す。
おそらく私の見た目を見て美しいって言っているのだろう。
自分にめちゃくちゃ似てるこの見た目に対してこの人はこんなに悶えちゃってるの?
ナルシストも極めるとここまでくるんだね。
「くしゅん……」
そういえば濡れたままだから冷えるな。
冷えた二の腕をさすると、はっと青ざめたクジャに抱きかかえられた。
「僕としたことが……急いで湯浴みの用意をしなければ! そこの黒魔導士、早急に準備を!」
それからの出来事は嵐のようだった。
あれよあれよという間に、風呂場に連れられた私は湯船に押し込まれ。
ビビのお兄さんのような見た目の人に体をまさぐられたと思うと、いつの間にか、わっせわっせと運ばれ。
気づいたときには清潔なレース生地の服を着た私はふかふかのベッドの上に座っていた。
「え、何事!?」
「この体に合わせて用意した服だけど、とても似合っているね」
満足そうにしきりに頷くクジャに、つっこみは通じないのだろうと私は悟った。