第11章 ターニング
ふわりふわり。
光のない深い海の底を漂っているみたいだ。
ひんやりとした液状の感触を肌に感じる。
浮いては沈む手足を動かすことはできない。
私は誰だろう。
ぼんやりと考えるけど、まどろみの中にいるようではっきりとした思考で考えることができない。
多くの人の気配が近くでする気がする。
誰かいるの?
周りで闇のようにうごめく気配は、どこか苦し気で切なげに何かを訴えかけてくるようだ。
どうして皆、そんなに悲しそうなの?
うごめく闇のなか、遠くの方でぼんやりとあたたかな青が光る。
青く、透き通るような、水のような。
きれい……。
近づくごとに青い光は私の体を包み込んでいき、やがて息苦しさを感じた。
……
……
……
「ゴボッ…………!」
息を吐きだし、息を吸おうと試みて自分が液状のなかにいることに気がついた。
息、苦し……。
酸素を探すようにもがいていると足元から液体が流れはじめ、頭上に空気の層ができていることに気づいて慌てて顔を突き出す。
「ぷはっ……ゲホッ、ゲホ……」
徐々に水深は下がっているらしく、やがて足元まで水はなくなった。
「はあ~……」
危うく死ぬところだった。
ようやく息をととのえおわると、目の前のガラス板がガコッと音を立てて開いた。
「お目覚めだね、プリンセス……、……っ!」
水を鼻から吸ってしまったみたいで、鼻の奥がツーンとする。
ううう、痛い。
咳払いをしてみるけど、この痛みはしばらくしないと治らないんだろう。
そんなことを考えながら、声の方を見上げると、何か言いたげなクジャが立っていた。
「ク、ジャ……?」
「…………」
「クジャさん?」
「………………」
おーい、どうしました。
目を見開き、こちらを凝視しているクジャ。
完全に意識がどっかにいってる。
彼の目の前で手を振ってみようか、と手を上げようとすると。
服が水を吸って重くなったようで非常に腕が重たかったのであきらめた。
あ、私の手白い。
「…………………………美しい」
「ん……はい?」
「非常に美しい!」
「うわっ」