第11章 ターニング
「君の元いた世界には召喚魔法というのはなかったかな?」
私が首を横に振ってみせると、クジャはそのまま説明を続けた。
「このガイア上には強大な魔法の力をもつ召喚獣を従える能力を持つ召喚士たちがいる。この召喚獣の力が非常に強大でね、ひと吹きで街一つを滅ぼす力をもつんだ」
ひと吹きで街一つを滅ぼすだなんて。
仮にそれが大袈裟な表現だとしても、召喚獣の力というのは非常に大きなものなんだろうということはクジャの恍惚とした語り口から伝わってきた。
「召喚士たちはその身を隠すように人里離れた場所に住んでいたのだけど、ある日、その力をやっかんだガーランドが村自体を滅ぼしてしまった」
ガーランド。
その名を口にした瞬間、クジャが忌々し気に顔をしかめる。
憎く思っている相手なのだろうか。
「でも、それとダガーに何の関係が? 召喚士は滅んじゃったんでしょ? だったらもう召喚獣の力はなくなっちゃったんじゃないの?」
「ここまで話してまだわからないのかい? 君は察しが悪いね」
「いちいち憎まれ口たたかないでよ。それで?」
私が不機嫌に先を促すと、「美しくない……」と呟いてクジャはため息をついた。
「ガーネット姫は召喚士の生き残りなのさ」
「……!!」
「だから女王陛下は娘を手に入れたがっていた。僕はそれにほんの少し手を貸していた。母親の幸せを願って帰ってきた娘を待っていたのは、娘のことを想った優しい母親ではなく、娘の持つ力をどん欲に欲しがるみにくい母親。とても悲しい物語だと思わないかい?」
頭の中が混乱する。
ダガーは召喚士で、召喚獣を操る力を持っている?
ブラネ女王はそれを手に入れようとしていて。
召喚獣は街を滅ぼすことができるほどの力。
ブラネ女王がその力を手に入れたがっている理由は……。
「ブラネ女王はブルメシアを襲った……召喚獣の力を使って他の国を支配しようとしてる?」
「大正解。アレクサンドリアの女王はブルメシアの侵略に成功した。次はどこを狙うだろうね?」
「次は……リンドブルム……? シドおじさんが危ない!」
そんな、そんな。
ブラネ女王に、そんな大きな力を渡しちゃだめだ!
皆ひどい目にあってしまう。
「お願いクジャ、ここから出して! ダガーを助けないと!」