第11章 ターニング
「……まあ、かわいげのない君でも話し相手くらいにはなるからね。別に来たってかまわないだろう」
私みたいなのにわざわざ話しかけにくるなんて、クジャは友達がいないのだろうか。
かわいそうな人なのかもしれない。
「そうだな……じゃあ退屈そうな君に僕からの贈り物。特別に何か一つ願いをかなえてあげよう」
「え、ほんとう!?」
「ああ、ほんとうだとも、何を願う? とびっきり腕のたつシェフにごちそうを作らせようか、それともきらきらと輝くガラスのくつがほしいかい? ああ、僕の美しさの秘訣を教えるのも悪くないね」
「じゃあ、ここから出してよ」
「そんなことでいいのかい?」
「え、出してくれるの!?」
「はじめからそのつもりだったからね」
半分冗談で言ったのに。
まさかずっと願ってたことを叶えてくれるとは思わなかった。
「ただ今すぐとはいかない。だから今は他のお願いで我慢してくれるかい? お姫様」
ここから出れる……?
クジャの言うことを完全に信じることはできなくとも、少しの希望は持てるかもしれない。
「ふふ、やはり女性は笑顔の方がいい」
無意識のうちに頬が緩んでいたみたいだ。
覗き込んできたクジャの目が細められたのを見て、私は口を引き結ぶ。
「じゃあ別のお願いを言うね」
気を緩めてしまったことをごまかすように少し声を固して聞くと、クジャは首肯したので、私は遠慮なくずっと考えていたことを尋ねてみた。
「どうしてダガーを襲ったのか教えて」
「ああ、白鳥のお姫様のことが知りたいのか」
白鳥?
私が小さく呟いたのを耳聡くきいたのか、クジャは「みにくいアヒルの子という意味さ」と答えた。
「人はどうにも欲深き生き物でね、女王はさらに強大な力を欲して、ついには自分の娘の中に眠る力に目をつけたのさ」
「ダガーに眠る力……?」
「ああ、召喚獣の力さ」