第2章 家出騒動
そんな冷や汗は、後ろから迫っていた隊員の怪しげな笑い声に吹き飛ぶ。
「な~んてね、大丈夫だよ、俺達が無事に誘拐させていただきます」
唖然としていると、私の肩を優しく押しのけて彼は立ち塞がるようにスタイナーの前に出る。
すれ違いざまに見えたメットの間。
そこには見覚えのある赤髪。
赤髪……
まさか、ジタンと一緒にマーカスの友人役をやってた人?
ってことは、仲間!?
「なぬ~!?!? おぬし、何者だ~!!」
スタイナーは見事に騙されていたようだ。
だよね、私もびっくりした。
さっきの劇中、マーカスを助けに行く一場面のように、彼ら三人は威勢よく剣を抜きスタイナーと対面した。
「ガーネット姫をお守りするのは、オレ達だ!!」
「おのれ、姫さまをたぶらかす悪党どもが~!」
スタイナーは憤慨したように飛び跳ねると、ベルトで背中に括りつけられた幅広の騎士剣をスラリと抜きはなった。
ギラリと光が刃の表面を滑っていき、緊張がはしる。
そして戦闘は始まった。
三対一とこちらの人数が多いこともあり、スタイナーはジタンたちの素早い攻撃に翻弄されていた。
自慢の剣技も存分にふるえず、スタイナーは防戦一方。
汗を垂らしながら三人の攻撃に対応していたスタイナーは、大きく後ろに下がるとぐっと手に力を入れた。
「ムムッ! こうなったら!」
スタイナーの握っていた騎士剣が青白く発光する。
なにか技を出そうとしているらしい。
どうやら標的はプルート隊員に扮した赤髪の彼。
剣が振り下ろされたと思うと、彼の周りが青白い光に覆われた。
次の瞬間──
ブリブリッ、ブリブリッと特有の音が……
って何これ!?
「きゃああっ!!」
彼が着ていたプルート隊の鎧が弾け飛んだかと思うと、無数の黒光りする集団が飛び散った。