第11章 ターニング
「女性にため息は似合わないよ、プリンセス」
「クジャ! いつからいたの?!」
「さあ、いつからだろうね」
そういってクジャは腰までとどく銀髪を揺らめかせた。
彼は割と頻繁に暇を持て余した私の様子を見にやってくる。
「調子はどうかな? お姫様」
「どうもこうもないけど」
「……もう少し気のきいた返事くらいできないのかい」
「そう言うなら何か気のきいたものでも持ってきてくれない? こんな何もない場所で何かあるわけないでしょう」
「君はもう少しかわいげを覚えた方がいいと思うね」
こうしてやって来ては、私になんだかんだと嫌味を言ってくる。
たまの変化であるクジャの訪問も、私にとっては全く嬉しくない。
かわいげがなくて悪うございましたね。
「かわいげのない女と話してても楽しくないでしょう。監視のためだったらこんな頻繁に来なくていいよ、どうせここから出られやしないんだから」
いくら歩いても行き止まりは見つからないし、飛び跳ねても、大声を出しても何も起きない。
疲れもしないし、お腹もすかない。
生きているか死んでいるかもわからない。
私は半ばあきらめていた。
唯一突破口になりそうなのは、私をここに閉じ込めた張本人である彼だが、彼はダガーやジタン達の敵だ。
敵を頼りにすることもできないだろう。
というわけで、私はあきらめてぐれている。
一人ラジオごっこも飽きてきたし、今度は何をしようか。
今はやりのユーチューバー風に商品紹介でもしてみようか。
ああ、紹介する商品もないね。
目の前でクジャがため息をこぼした。
人の顔を見てため息をこぼすなんて失礼な奴だ。