第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
タイチside.
「雷鳴剣」
反射的にメイスを体の前に差し入れたものの、目の前が真っ白に光ると強いショックが全身を走り、俺の体はふらりと揺れた。
何が起こったのかわからない。
チカチカとした世界の中、五感もまともに働かないでいると、世界が再び強い光で埋め尽くされる。
「もうこの地には踏み入れぬことです」
何秒経ったのか、気づくと俺は地面に倒れ込んでいて、周りを見れば……皆が同じように満身創痍の状態でうずくまっていた。
「おまえたちの力では、私に勝つことなど到底不可能です」
栗色の髪がふわりと揺れると、冷たい瞳がこちらを見下げる。
まじかよ……たった十数秒くらいだったはず。
それだけの時間でここにいる皆を戦闘不能にしたのか?
自分にとって格上だった皆が全く敵わない存在。
俺が思わず息を飲んでいると、肩で息を整えていたジタンがぎらりと彼女を見上げた。
「ちょっと待てよ……おまえ、確か、アレクサンドリアの女将軍だったよな……」
膝に手をつき、立ち上がる。
「女将軍であるおまえの使命はなんだ!? ダガー、いや! ガーネット姫を守ることじゃないのか!? あのイスで気を失っているのが、誰だか分からないわけじゃないだろうな?」
アレクサンドリアの将軍らしい彼女は、はっと視線を俺達の後方へやると殺気立った気配を解いた。
「やはり……やはりブラネ様は、ガーネット姫の命を取ろうとしておられたのですね……」
それから深く息をはくと、さっきまでの態度が嘘のように彼女は緩く首を振ると自身の剣に視線を落とす。
「長い間の迷いが解けました……やはり私は間違っていたのです……ブルメシアの民よ、私は許されない過ちを犯してしまっていたようです……」
「……当たり前じゃ! 私はそなたを簡単に許すことはできぬ!! じゃが、いまはダガーとやらを助けてやりたいと思う……」
何の話をしているか俺にはわからないが、きっと二人の間に確執のようなものがあったのだろう。
彼女はアレクサンドリアの将軍らしいし、俺達を攻撃したことも頷ける。
この国の女王であるダガーちゃんを殺そうとしない味方だと判断していいのだろうか。
「……私の力でどこまでできるかわかりません。ですが、できる限りのことはやってみましょう!」