第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
タイチside.
「戻ってきてたんですね!」
兵士に見つかりぎくりと体を揺らしたのだが、どうやら彼は襲ってこないらしい。
駆け寄ってきた兵士はハイレグアーマーではなく珍しく男。
アレクサンドリアに女兵が多いことと彼が友好的なこと、何か関係があるのだろうか。
「ガーネット様もお戻りになられたと聞きまして、もしかしたら隊長もと思っていたのですが……いやはや、ご無事そうで」
「自分のことはいいのである! 至急、姫さまを探しだし次第保護するようプルート全隊員へと伝えるのだ!!」
「ガーネット様ですか? 女王の間にいるのでは?」
「なにぃ!?」
「先ほど女王と謁見してからガーネット様の姿を見ていないと女兵どもが話しているのを耳にしましたが……」
その情報が確かなら、ダガーちゃんは今も女王の間にいることになるが……ここの兵士の言うことを信用していいものなのか。
俺はずいぶん疑惑的な目をしていたらしく、スタイナーさんと目が合うと軽く咳払いをされてしまった。
「直属の部下の言うことだ、嘘ではないだろう」
それから一言二言言葉を交わすと、男兵は自分の仕事へと戻っていった。
ここに来てから敵ばかりだったスタイナーさんだったが、信頼を置ける兵士もいるらしい。
考えてみれば基本的にスタイナーさんは会社のことばかり考えているような熱血上司タイプだ。
そりゃついてくる者もいるだろう。
そもそも俺達はこの国のお姫様を助け出そうとしているわけで追われるのもおかしいと思うのだが……やっぱり俺の知らない深い事情ってやつがあるんだろうな。
俺はダガーちゃんを助けられればいい。
この国の事情にまで首を突っ込むつもりはなかった。
女王の間へ近づくにつれ、何故か兵士達の数は少なくなっていく。
普通は逆じゃないのか? と思いつつ、女王の間へ辿り着くとそこはもぬけの殻で俺達は唖然とした。
「誰も、いないね」
そう広くない部屋を見渡すが、目立ったものといえば、薔薇の絨毯が敷かれたその先に柔らかそうなソファーと火のついていない暖炉、その横で静かに紫の光を照らす灯りのみである。
「ブラネが着くにはまだ時間はあるけど……まいったな、他の場所を探しに行く時間あるか?」