第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
タイチside.
……そんなことより今はダガーちゃんだ。
俺が気を取られている間に話は進んでおり、リーダー格っぽい金髪の男が改まってこちらへ目を向けた。
「オレはジタンだ。こっちの赤い服の彼女がフライヤ。それで……」
「ボクは、ビビだよ」
「こいつはこう見えて黒魔法を使えるすごい奴さ」
少年が恥ずかしそうに帽子を揺らす。
その仕草は見た目に似合わずとても人間っぽい。
三人の紹介に続いて、俺も口を開く。
「俺はタイチだ」
「タイチか、珍しい名前だな。今は詳しくお互いのことを話してる暇はないけど、オレ達の目的は一緒だ。ダガーを助けよう」
「あ、ああ……よろしくな」
金髪の男……もといジタンが手を出したので、少し戸惑いつつも軽く握ると、彼の青い瞳と合った。
その目はすぐにそらされ、合っていたのは数秒だけど、強く印象に残る。
(ジタン……どこかで聞いたような名前だけど)
そんな疑問を抱きつつ、確かにジタンの言うように時間がないのだと、俺は彼らを受け入れた。
今の俺達は言わばこの城にとって悪性ウイルスのようなもので、安全を守るために見つけ次第攻撃するよう配置された大勢の兵士達に囲まれてしまう心配があったが、その点ではジタンの有能さが際立った。
彼は何時ぞやのマーカスさんのように忍び込むことに慣れているようで、彼の指示に従うと不思議と兵士との戦闘が最小限に押さえられる。
「ムムム、あれは……」
「スタイナー隊長!!」