第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
タイチside.
「じゃ、俺は兄キがいる魔の森へ急ぐっスから。タイチさんも頑張るっスよ」
地上の光が見えた頃合で、マーカスさんはそんな言葉を残して足早に去っていってしまった。
没収された武器もさっきそこで見つけ、今は各々の手にある。
もう思い残すこともないんだろう。
ずいぶんあっさりとした別れになってしまうが、彼も急ぐ事情がある。
俺も軽い礼の言葉を投げかけるだけでその背中を見送った。
「うぬ〜っ、なんと薄情な!」
「まあ、マーカスさんはもともと“兄キ”を助けにきてますから」
「仕方ない……あんなやつは放っておいて、二人で姫さまを探すのだ! 急ぐぞタイチ殿!!」
はい、と返事をしたかしないかのタイミングで、頭上からひゅるると光の球が降ってきた。
「うん? 何だ!?」
光の球はすぐに色を失う代わりに、驚いたことにその場に等身大の人が現れる。
その数は降ってきた光の球と同じ、三つ。
俺と同じくらいの背格好が二人に、ちっこい少年が一人。
冒険者っぽい風貌から兵士ではなさそうだけど……そうなると、ここに現れた理由がますますわからない。
「すごい現れ方だな……敵か?」
「き、貴様! な、な、なぜ、このような場所にいるのだ!?」
「スタイナーのおっさん! ここはアレクサンドリアなのか?」
現れた内の一人、金髪の男がすぐさまスタイナーさんへと声をかけてきたことから、彼らは知り合いなのかもしれない。
「うぬぬぬ、いまは貴様の質問に答えている時間はないのである! 自分は一刻も早くこのアレクサンドリアの地下牢から抜け出し姫さまをお助けしなければならんのだっ!!」
「それだけ聞ければ十分だ、さあ、ダガーを助けに行こう!」
「ちょ、ちょっと待った!!」
今まさに走り出そうとしていた三人に声をかければ、彼らはなんだというように振り返る。
時間がないのはわかってる、けど。