第2章 家出騒動
「なにモタモタしてるずら! 早くこっちへ来るずら!!」
まさか追っ手?
と慌ててジタンの背に隠れる私。
彼の背中越しにちらりと顔を出すと、ものすごい凶悪顔がこちらを睨んでいた。
しかも片手に持ったトンカチを振り回して、怒っているみたいだし。
こ、怖い!
「ガーネット姫、心配しなくてもいいよ。こいつは仲間のシナってやつだ!」
「そ、そうなんですか?」
ジタンの説明に、私は胸を撫でおろした。
それにこのフォルム、どこかで見たことがあると思ったら、劇でジタンと共にマーカスの友人役を演じてた人だ!
「驚いたりしてごめんなさい」
「でもまあ、そのツラじゃガーネット姫が驚くのも無理はないぜ」
私の謝罪に、ジタンが軽口を叩く。
「なんだとっ! これでも毎朝、キチンと手入れしているずらっ!」
シナもそれに対して怒っているけど、本気ではないみたい。
きっとすごく仲がいいんだろうなぁ。
羨ましい。
そんなやり取りをしていると、再びスタイナーの声が聞こえてきた。
大変! 急いで逃げないと。
「じゃ、ついて来るずらよ!」
「よしっ、シナについて行こう!」
二人の声に私は頷き、いつの間にか熱のひいた頬を触って、シナが入ってきた扉へと進んで行った。
シナの後に続いて扉をくぐると、辿り着いたのは行き止まりの部屋。
「おい、シナ! こっちへ来ても行き止まりじゃないのか?」
ジタンも焦ったように声をかける。
そんな私達の様子を見て、シナは怪しげに笑った。
「ふふふ、こんなことも、あるかと思ってたずら」
部屋の中央に位置した大きなテーブルを蹴り上げていく。
すると、驚いたことにテーブルの下から大きな穴が姿を現した。
ズオオッと大きな音が立っている。
「こんな仕掛けを作っておいたずらっ!」
そう言って胸を張るシナ。
いや、確かにすごいけど。
まさか、この穴に飛び込むつもり?
穴を覗き込むと果てしない暗闇が広がっている。
うわぁ……
だけど部屋の外、それもずいぶん近くからスタイナーの声が聞こえてくる。
「さあ、飛びこむずらよ!」
シナの掛け声に、私達は思いきって穴へと飛び込んだ。