第2章 家出騒動
私達は本気だ。
そう伝えるようにきりりと見詰めると、ジタンは数回その青い瞳を瞬かせた。
そんなやり取りをしていれば、どこからかスタイナーの声が聞こえてくる。
「追ってが来たみたいです!」
再びフードの位置を戻した私の様子を見て、ジタンは「なんだかワケありのようだな?」と納得してくれた。
理解が早くて助かる。
「よしっ! ここはひとつ、オレに任せな!!」
「ありがとうございます」
私が思わず笑顔を浮かべると、ジタンはその場に片膝をついて胸に手を当てた。
不思議に思って見ていれば、芝居がかった動きで顔を上げた彼と視線が合わさる。
「それでは、王女様! 今から、わたくしめがあなた様を誘拐させていただきます!」
熱い視線をこちらに向けながら、彼は恥ずかしげもなくそんな言葉を放った。
その言葉と仕草は、物語の主人公が姫であるヒロインを連れて逃げる、そんなワンシーンみたいで。
こちらを見詰めるその青い瞳に目が離せない。
顔に熱が集まる。
思わず私が後ずさると、それを見た彼はニヤリと笑みを深め、私は耐えきれず視線を横にずらした。
こんな言葉が似合うの、彼みたいな人だけじゃないの?
ズルイ、わかっててやってる。
こんなの照れるに決まってる。
なんとも居心地の悪い視線を受けながら私が表情を戻そうと苦労していると、突然後ろからバンッとドアの開く音がした。