第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
ビビside.
「ダガーがっ!?」
「この場で争っても、ガーネットは救えぬぞ」
壁の向こうに食ってかかるジタンをフライヤがなだめる。
「だからといって、このままここでじっとしてろってのか!?」
ジタンの青い瞳が見開いて、猫みたいに小さくなる。
それもそのはずだと思えた。
ボクらが船の中を探索していると、壁の向こうからブラネ女王の声が聞こえてきたので耳を寄せたのだけど。
『このレッドローズがアレクサンドリアに到着したら、ただちにガーネットは処刑する!』
声の主は紛れもなくダガーお姉ちゃんのお母さんであるブラネ女王のものだった。
偶然聞こえてきたその声に、ボクらは震え上がる。
会話の内容から、ダガーお姉ちゃんはアレクサンドリアにいるみたいだ。
やっぱりアレクサンドリアに捕まってたんだ。
「なんとかして、ブラネよりも先にアレクサンドリアに戻らなきゃ! でも、どうしたら……」
「そうだジタン、あれを使えば!」
ふと思いついた考えにボクは走る。
足を動かしながら脳裏をよぎるのはパック、クイナ、それにクレイラの人達。
ダガーお姉ちゃんにも会えなくなるなんて……そんなの嫌だよ。
足を止め、追いかけてきていたジタン達に振り返る。
「ねえジタン、さっき兵士がテレポットを使ってアレクサンドリアに戻るとか言ってたよね?」
ボクの言おうとしていることに気づいたのか、ジタンは少し考えると頷いた。
「そうだな……よしっ、こいつの中に入ってみるか!」
それから壺のような機械にためらいなく飛び込む。
フライヤも入ったのを見届けて、ボクもその隣の壺に飛び込んだ。
「みんな、念じるんだ!」
ダガーお姉ちゃん……絶対に助けるから。
だから、お願い。
ボクらをアレクサンドリアに運んで。
その瞬間、ふわりと体が浮く感覚がした。