第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
ビビside.
雲一つなかった青空が一面、赤黒く染まる。
その中心、大樹の真上から光の柱が降りると、巨大な物体が駆け下りてきた。
物体は馬に乗った人間だとわかる。
鉄仮面のような顔のその人はマントをたなびかせ、馬が虚空を蹴る。
初めて見る光景に唖然としていると、腕を振り上げた鉄仮面が巨大な槍を放った。
槍は大樹へ一直線に走り、
次の瞬間、爆発した。
バラバラと大樹が弾け、燃えるような爆風が空に膨れ上がる。
それをボクは、ただ、唖然と見ていることしかできない。
クレイラが……パックが……クイナが……。
みんな、みんな……。
気づけば空は元の色を取り戻し、虚空を走る馬は消えていた。
ボクはドスンと地べたに尻もちをつく。
「おいっ、見たか!?」
隣でジタンが驚愕の声を上げた。
その向こうでフライヤが膝から崩れ落ちる。
ボクも信じられない気持ちで、空の向こうを見つめた。
大樹が爆発した。
クレイラの街ごと飲み込むような爆発。
みんな、なくなってしまった。
みんな、みんな……。
ボクは手のひらに力を込める。
アレクサンドリアはここまでやるんだ……ここまで……。
ふと呼ばれる声に顔を上げれば、少し離れた場所でジタンが呼んでいる。
隣を見れば項垂れたままピクリとも動かないフライヤ。
その表情は頭の被り物で見えないけど、受けたショックはボクが考えているよりもきっとずっと大きい。
ボクは少し心配になって声をかけた。
「ねえ、フライヤ……ジタンが呼んでるみたいだよ?」
「しばらくの間……そっとしておいてはくれぬか?」
答えたフライヤは相変わらずピクリとも動かない。
ジタンが駆け寄ってきた。
「人影が見えるんだ! こっちへ来て隠れよう!」
その言葉に、フライヤは重い体を持ち上げた。