第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
ビビside.
「ストックブレイク!」
鋭い光が爆散すると、内側から全身を砕かれるようなダメージがきて、一気に膝から崩れ落ちる。
「ざれ事もここまでです」
ボクらを軽く見下げると、ベアトリクス将軍はすぐに背を向け歩き出す。
悔しいけど体が麻痺したように力が入らなくて、それを見ていることしかできない。
「黒魔道士たちよ、用は済みました。引き上げの準備に取りかかりなさい!」
ちょうどやってきた黒魔道士兵。
その内の一人が降ってきた時同様虹色の球体になると、驚くことにベアトリクス将軍も吸い込んで空へと飛んでいってしまった。
「おいっ、消えちまったぜ!」
体の痺れは一時的なものだったのか、回復の速いジタンが立ち上がる。
「どうする、フライヤ?」
フライヤも立ち上がると、空を見上げてから考え込む。
そんな時、こちらに近づく黒魔道士兵がひとり。
ボクらに見向きすることなく再び球体になったのを、ジタンは好機ととらえたらしい。
「しめたっ、ついて行くぞ!! おまえたちも、すぐ来いよ!」
するとあろうことか、ジタンは大胆にも球体に飛び込んで、ベアトリクス将軍のようにヒュルルと空へ消えていってしまった。
それからすぐやってきた黒魔道士兵に、覚悟を決めたようにフライヤも混ざって飛んでいく。
「ジタン、フライヤまで……」
どうしよう。
オロオロしていれば、またこちらに黒魔道士兵がやってくる。
何も感情を映さないはずの金色の瞳が、ボクを見つめている気がした。
引き寄せられるように彼と向かい合うと、頷く。
グワッと引っ張られるような感覚とともに、ボクは空へ舞い上がった。
…………
「ワタシ、高いトコロ苦手アルね……」
はじめはわけがわからなくて、でも慣れてくると流れる空の景色が見える。
それにしても、これはいったいどこに着くんだろう。
すでにずいぶん遠くになってしまった大樹を見ながら思う。
きっとベアトリクス将軍と同じ場所に着くだろうから……アレクサンドリア?
アレクサンドリアで思い出すのは、いまだ会うことのできないダガーお姉ちゃんだった。
お姉ちゃんは今どうしているのかな。
まさか、ブラネ女王に捕まった……?
そんなことに考えを巡らせていると、突然、空が禍々しい赤に染まった。