第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
ビビside.
「生き残ったのはこれだけか……」
ようやくたどり着いた大聖堂の前。
ボクらと一緒にここまで来た6、7人の人達が、不安そうにこちらを見つめている。
「大祭司はどこにおられるのでしょう?」
「ブルメシア王はどこに?」
「とうちゃんがいなかった!」
「うえ〜〜〜ん!」
「みんな、大聖堂の中に逃げ込んでくれていればいいけど……」
紫屋根の建物を見上げる。
幸い大聖堂が崩れていることはなかった。
敵の大軍に襲われている様子もない。
ここに来るまでに、生きている人にあまり会えなかったけど、すでに多くの人が避難した後だったからなのかもしれない。
……そうだったらいいな。
「さあ、大聖堂に入ろう!」
ジタンの掛け声にボク達が入り口へ向かうと、空からヒュルルと音を立てて球体が降ってきた。
行く手を阻むように現れたのは黒魔道士兵。
「また来やがった!」
じりじりと間合いを詰めていると、タイミングを見計らったように次から次へと球体が降ってきて……
ボクらはあっという間に取り囲まれてしまった。
一緒にきた街の人達を真ん中に、ボクらは背を向け合う。
「くそぉっ、守りきれるかっ!?」
誰もが最悪の事態を想像して額に汗をかいていた。
そんな時。
「邪悪なる者たちよ、そこまでだっ!」
頭上から勇ましい声が響き、ボクの目の前にいた黒魔道士兵が降ってきた何かに押しつぶされた。
何かは次の瞬間には、隣の敵を。
また隣の敵を、と目にも留まらぬ速さで敵を倒していく。
「この槍が折れぬ限り、この地を奪うことはできない! きたえ抜いた私の槍の前には、おまえ達など薄葉も同然!」
すべての敵が倒れると、男の人がこちらを振り向く。
それは槍を持った男の人だった。
視界の隅、フライヤが目を見開くのがわかった。
「さあ、はやく逃げるのだ!」
「誰だか知らないけど、恩にきるぜ!」
男の人は、フライヤと同じように鼻が尖っていた。
使っている武器もフライヤ同様、槍。
ブルメシアの人、なのかなぁ。
……いや、今ははやく大聖堂に入ろう。
流れる視界の中、フライヤだけが男の人から目を離さずにいたのがボクは気になった。