第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
ビビside.
街の建物の頭がチラチラと見える位置まで戻ってくると、空から球体が降ってくる様子が見えた。
その正体が何であるかは街へ着くとわかる。
虹色に鈍く光っていた球体は、地面へ降り落ちると黒魔道士兵に姿を変える。
街のあちこちから悲鳴と爆音が響いていた。
「助けてください!」
街の入り口で愕然とその様子を見ていたボクらの元に逃げ込んできたのはクレイラの女の人達。
「街中に化け物があふれて……」
「そんなにいっぱいいるのか!?」
「空から雨のように降ってきて……」
焦ったように説明する彼女らの背後に、とんがり帽子の影が忍び寄る。
「きゃーっ!」
女の人達がボクらを通り過ぎて街の外へ行くと、黒魔道士兵は標的を変えたようにボクらの方へ手をかざした。
「キル!」
爆発を合図にボクらの戦いは始まった。
街の中に次から次へと降ってくる黒魔道士兵。
ふもとから攻め上がってくるアレクサンドリア兵。
その両方を相手にしながら街の人達を守らなければならない。
「おいっ、こっちに逃げろ!」
逃げ惑う人達とすれ違いながら、こちらに向かってくるアレクサンドリア兵と対峙する。
「いよいよ総攻撃ってやつか!?」
「王の無事が心配じゃ!! 大聖堂へ向かおう!!」
アレクサンドリア兵を倒せば、また空から黒魔道士兵が降ってくる。
倒しても倒してもきりがない。
敵をさばきつつ、街のなかでまだ生きている人達と合流して、頂上にある大聖堂を目指す。
兵士達を避けながら道を進んで行くと、こんな時であるのに、不思議と静けさをまとった場所に出た。
街から突き出るようなバルコニーには、巫女姿の女の人が二人、不安そうに寄り添っている。
「なんだ、まだこんなところにいたのか?」
「ええ、私たち、この場所がとっても好きですの」
「心を洗い流すような砂嵐の景色はなくなりましたけどもね……」
「そうだな、オレも綺麗だと思うよ。この街は綺麗な街だ」
ジタンが、頬についた血を拭いながら目元に力を入れる。
「住んでる人も、とても優しい人たちばかりだ。だから、なんとしてもみんなを守りたい! さあ、大聖堂に集まろう! みんなで力を合わせれば、なんとかなるさ!」
女の人達は頷くと、ボクらと共に上へと急いだ。