第2章 家出騒動
いくつもの扉を開けて走る私。
また扉を開けて、現れた階段を下りる足を緩めながら考える。
目的の劇場艇までやってきたわけだけど、私達はいつまで逃げなきゃいけないんだろう。
ここら辺に隠れればいいんじゃない?
ごちゃごちゃとたくさんの荷物が散らばった部屋を見回すと、ガーネットに声をかけられた。
『レイナ、考えてみたのですが、あの追いかけてくる方達はおそらく劇場艇の方よね』
「うん、きっとそうだね」
『でしたら彼らに協力してもらうのはどうかしら』
なるほど確かに、と私は部屋の中央で立ち止まった。
城からの捜索も進んできている。
彼ら、ジタンって呼ばれてた人達に協力してもらえれば、スムーズにアレクサンドリアから出ることができるかもしれない。
タイミングよく後ろでバタッと扉の開く音がした。
振り返れば、ジタンがこちらを見て息をついている。
「やっと観念してくれたようだな?」
そんな言葉をこぼすあたり、彼にとってもここまでの行程はけっこう大変なものだったのかもしれない。
うん、これ以上彼らから逃げるのは無意味な気がする。
私は決心を固めると、軽く咳払いをした。
「あなた……もしかして、この劇場艇の方でしょうか? ご存知かもしれないんですけど……実はわたくし……」
深く被っていたフードを上げて、顔を見せる。
「アレクサンドリア王女のガーネット=ティル=アレクサンドロスなんです。あなたを見込んでのお願いがあります。
いますぐ、わたくしを誘拐してくれませんか!?」
「な、なんだって!? それじゃ、アベコベ……」