第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
「お芝居?」
振り返ると、部屋の入り口に銀髪の男の人が立っていた。
誰だろうこの人、知らない人だ。
だけど、どこかで見たことがあるような……。
「そう、とても美しい物語のお芝居……白馬に乗った王子と……見目うるわしき王女の悲恋の物語……」
なんか語り始めたけど……。
というかこの銀髪の人、恰好が派手だ。
派手というより変体的である。
胸から太ももにかけての露出が激しい。
局部はかろうじて隠れているものの、おへそとか丸出しだし。
お腹冷えないのかな……。
「王女はその美しき肌に悲しみの色をたたえたまま、百年の眠りに落ちる……」
「あなたは……どこかで……?」
ダガーも首をひねっている。
もしかしたらどこかで会ったことがあるのかもしれないけど……思い出せないな……。
銀髪の男の人は、そんなダガーを見てくすりと笑った。
「キミと僕とが出会うことはどうやら運命で決められたことのようだね。さあ僕のかわいい小鳥よ、僕のもとへおいで」
なんだか発言まで変体的だ。
そんなことをのんきに考えていると、彼はこちらにコツコツと近づいてきた。
そしてあろうことかダガーの腰に手をまわす。
『ちょっと!』
「僕が夢幻の世界へといざなってあげよう」
しまった!
そう思ったときにはもう遅かった。
銀髪の男がダガーの額に手をかざし、頭にぐるりとした違和感が流れ込んでくる。
「う……」
まぶたが……重くなってくる……。
まずい、これがブラネ女王の思惑だったんじゃないだろうか。
ブラネ女王はダガーを手に入れたがっている。
なぜかはわからないけど。
「思ったとおり、寝顔がとっても素敵だよ」
男のそんな言葉が聞こえると、意識はフッと暗闇に落ちていった。