第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
ジタンside.
パック王子って何歳なんだろうな。
オレもブルメシアの民の年齢を正確に予測できるわけではないけど、背格好から見てもまだビビと同じくらいだろう。
だというのに、どこか遠くを見やるその横顔は大人びて見えた。
旅をして色々な経験を積んだことによるものかもしれない。
生まれも関係しているかもな。
……いや、王族であってもそうとはかぎらないか。
オレは照れたような彼女の笑みを思い出した。
思い出して、こぶしを握りしめる。
結局いまだに会うことはできていない。
まさか戦争に巻き込まれて……いや、そうなればもっと大事になっているはず。
アレクサンドリア兵にも気づかれないままっていう可能性もなくはないけど……。
オレは嫌な想像を追い払うために頭を振った。
「さあ、大聖堂にはブルメシア王もおられます。会いに行きましょう!」
「オヤジか……」
フライヤの提案に渋顔を見せたパック王子は、うんと大きくひとつ頷く。
「いや、オヤジに会うのは照れる! ヨロシクとだけ言っておいてくれ!」
それからあっという間にこの場から駆け出して行ってしまった。
「ビビ! 元気でな!」
そんな言葉を残して。
「なんだかナマイキな子供アルね。ビビのほうがよっぽど可愛いアルね」
「あの子、ボクの初めての友達なの。ちょっと追いかけてくる!」
パック王子と友達なんてビビも意外と顔が広いんだな。
そんなことを思っている間に、ビビもこの場から出て行ってしまった。
フライヤが古来からクレイラで伝わる踊りを踊るというので、オレ達は街の大聖堂へきている。
元々ブルメシアの民とクレイラの民は同じ民族だったのだけど、しだいにブルメシアは武力を、クレイラは舞踊を重んじるようになったため、争いを避けるためクレイラの民がここに移り住んできたという過去がある。
それから500年間砂嵐を維持するために行ってきた儀式。
それがこれから踊ろうとしている踊りなのだけど、竜騎士であるフライヤの力を借りてより強力な砂嵐を作ろうということらしい。
ちなみにこの場にはブルメシア王もおり、パック王子が来てすぐに帰ったことを伝えると複雑そうな顔をした。
息子の顔を何年も見れないのはやはり寂しいのだろう。