第10章 消えたココロ~アレクサンドリア~
ジタンside.
あいつはブルメシアですれ違った……なんていうやつだったかな。
「どうしました? 何の騒ぎですか」
オレが名前を思い出そうとしていると、そばにいたクレイラの男が先に声をかけたらしい。
「こ、子供が、アントリオンに襲われてんだっ!」
「アントリオンが!? いつもはおとなしくしているのに、どうして……」
「なんとかして、あの化け物をおとなしくさせられねえのかいっ!」
「困りましたね……」
クレイラの男は少しだけ考える素振りをみせるとゆっくりと背を向けた。
「取り急ぎ私は、大祭司様に御報告しておきます」
それから、取り急ぎという言葉に見合わないゆったりとした足取りで去っていく。
「お、おいっ、待てよ! そんな悠長な…………ったく、クレイラの奴ってのは、どいつもこいつものんびりしていやがる!」
そうだ、こいつはダンだ。
ブルメシアの大聖堂へと続く長い階段で会った。
王より家族が大切だと言っていたけど、彼の家族は今無事なのだろうか。
「おい、そこの兄ちゃん! 腕に自信があったら、手を貸してくれねえか!」
オレは頷くと、ダンの背中を急いで追いかけた。
アントリオンは大きな鎌と大あごを持つモンスターだった。
渦巻く砂の中央で暴れているのだけど、見ればその鎌に子どもが引っかかっている。
遅れてやってきたフライヤによると、その子どもはパック王子というらしい。
「おお、フライヤ! 久しぶりじゃの〜〜!!」
暴れた拍子にオレらの足元に飛ばされたパック王子は、のんきにそんなことを言っている。
アントリオンはいまだ興奮した状態。
やるしかないだろう。
「グルルルルルル!!」
騒ぎを聞きつけてやってきたビビとクイナと共に、オレ達はアントリオンへ走る。
「フライヤ! 久しぶりだな!」
苦戦しつつもアントリオンを気絶させたオレ達にパック王子が話しかけてきた。
フライヤが心配そうに王子を見たけど、目立った怪我はないらしい。
しゃがんだフライヤは息を吐くと尋ねる。
「しかし、どうしたのですか? 長い間、ブルメシアを出たまま行方知れずになっていると聞きましたが……」
「うん、ちょっとな……」