第2章 家出騒動
楽団のフロアへ下りると、キョロキョロと動く金髪の頭が見えた。
「わっ!」
咄嗟のことに避けられず、彼の上に着地。
足元からイケメンくんのうめき声が聞こえる。
ごめんね。
でも捕まるわけにもいかないので、私はそんな彼を残して船内へと続く扉を開ける。
楽団たちのいるフロアから船内へと走って入ると、そこは楽器置き場のようだった。
雑多に置かれる楽器は、光を反射して眩しい。
楽器に目を奪われていたからか、曲がり角でドンッと肩が何かにぶつかってしまった。
見ると、銀髪の美人な女の人が尻餅をついている。
あああ、ごめんなさい。
「なにすんねんな~、ちょっと!! あんたなぁ……」
女の人はこちらをきっと睨むと立ち上がり、驚いたことに関西弁で詰め寄ってきた。
この世界にも関西弁ってあるんだね。
なんて感慨にふけっている場合ではない。
「ウチにぶつかっといて、謝りもせえへんの!?」
関西弁の人は気が強いみたいで、すごい剣幕でずんずん詰め寄ってくる。
「ご、ごめんなさい。事情があって、急いでて」
「もぉ~、ウチこれから舞台に出る用意せなあかんのに!」
関西弁の彼女はそう言って、身体を揺らす。
そっか、この劇場艇にいるってことは、この女の人も舞台女優なんだね。
どうりで綺麗なわけだ。
そんなやり取りをしていると、あのイケメンくんがやって来たようだ。
それに気づいた彼女はくるりと振り返る。
「ちょっと、ジタン、聞いてえな。このコ、ムチャクチャやねん!」
どうやらあのイケメンさん、“ジタン”っていう名前らしい。
「そんなことよりも、そのコと、話させてくれ!」
彼女の後ろ姿がピキリと揺れる。
「ちょっと!! そんなことって、どう意味やのん!?」
うん、今のうちだね。
私はすぐそこにあった階段を降りて先へと進んだ。