第9章 眠らない街~トレノ~
さすが王女だからかダガーは知ってるんだね。
アレクサンドリア城に一週間滞在しただけの私はもちろんこの場所は知らない。
「トット先生から、この場所の話を聞いたことがあるの。この場所は、昔のアレクサンドリア王が敵国の侵入を防ぐために設けた施設だって。それから、確かトット先生は、こんなことも言っていたわね……」
「姫さま! そのような話は後ほど、ゆっくり聞かせていただきます! このようなカビ臭い場所に長居しては体に毒であります!!」
「そうっス! 早く行って兄キを元の姿に戻すっス!」
確かにここにあまり長居はしたくないね。
お兄ちゃんがくしゃみをした。
私も『ダガー、早くいこう』と急かす。
「そうね、早く助けてあげなくちゃね」
それにしても、アレクサンドリアにこんな場所があるなんてね。
ここにくるまでに通った細長い通路なんかは、深い吹き抜けになっていて。
なんだか古代都市が地下に埋まっているような雰囲気だ。
ただ、何度も言うようだけど空気が悪い。
ブラネ女王の説得のこともあるし、早く地上に出ないと。
そんな事を考えながら、数段ずつの階段をつなぐ開けた踊り場を歩いている時のこと。
行く手を阻むように、ガシャンと格子状の壁が現れた。
『なっ!?』
床から壁が!?
スタイナーがガシャガシャと飛び跳ねる。
「おぬし、何をした~っ!」