第9章 眠らない街~トレノ~
トロッコに揺られること数十分。
霧の漂う暗いトンネルにほのかな明かりが滲み出る。
やがてトレノと同じような地下鉄のプラットフォームに近い場所が姿を現した。
「ついたっスね」
「ちょっとガルガントも疲れちゃったみたいね」
ガルガントはギョーと声を上げると降りるのにちょうどいい場所で止まってくれた。
確かにお仕事も久々だっただろうし、少し疲れぎみなのかも。
「しかしアレクサンドリアにこのような場所があるとは……」
トロッコから降りながら、スタイナーは物珍しそうに辺りを見回す。
施設のデザインはやっぱりトレノのにそっくりなんだけど、自分の仕えている城に知らない場所があったら、それは驚くかも。
「どこっスかね、ここは?」
「とにかく、行きましょう!」
中に入ってみると、かなり年季のはいった開けた通路にでた。
ところどころの壁は崩れており整備されていないことがうかがえる。
なにより、空気がよどんでいて……
ここは長いこと使われていなかったんじゃないかな。
「ここがアレクサンドリアか……」
そう言ってお兄ちゃんは珍しそうに周りを見るけど……
マーカスはいぶかしげに眉をひそめた。
「ここ、ほんとにアレクサンドリアなんスか?」
「知らぬが、きっとそうであろう!」
「で、どっちに行けば外に出られるんスかね?」
「う~む、それは……きっとこっちでありますぞ!」
スタイナーは通路の先を指さして振り向く。
「姫さま、急ぎましょう!」
「待ってスタイナー! わたしはこの場所を知ってるわ!」