第9章 眠らない街~トレノ~
「なっ!?」
敵が鋭い氷を出現させたらしい。
軽装だったスタイナー以外の三人が、氷柱を体に貫かせてしまう。
「ぐ……っ!」
これは、ちょっとやばいかも……
痛い……っていうか冷たい……っていうか痛い。
凍っているおかげか、幸いなことに出血はない。
だけど、この好機を相手様は待ってはくれないようだった。
初撃のように、長い首を振り下ろす頭突き。
絶望感が走るなか、スタイナーはぐっと剣を握る手に力をこめると、迫ってきたモンスターの頭にその剣を突き立てた。
つんざくような悲鳴。
モンスターはスタイナーの剣を頭に刺したまま、暴れるように霧の向こうへ逃げていった。
この場に残されたのは氷に貫かれた私達とスタイナー。
「姫さまっ!!」
スタイナーが血相を変えてこちらに走り寄ってきた。
腕と足から氷の柱が生えているダガーを見てスタイナーは息をのむ。
「大丈夫、見た目ほどじゃないわ」
ダガーはそう言うと、全体を覆うようにケアルを発動させた。
ここまでの旅でダガーも腕をあげたのか、より酷い怪我でも治せるようになってきている。
すっかり元気になった面々は息をついた。
「それにしても、剣持っていかれちゃったわね。あれ買ったばかりだったんじゃない?」
ダガーもスタイナーの剣が新しくなっていたことに気づいていたらしい。
そう言ったダガーに、スタイナーは表情を渋めた。
「あの剣でありますか……買ったというより、あれはもらったものでして……使っていてなんだか変な感覚がしていたので少し不気味だったのです」
「ただ、斬れ味は抜群でありましたが」とスタイナーは神妙に頷く。
そんなやり取りをしていると、どこからかガルガントの鳴き声が聞こえてきた。
私達があのモンスターを追い払ったのを遠くで見ていたのかもしれない。
ゴトゴトと音をたてながらやってきたガルガントに、私達は再び乗り込むのだった。