第9章 眠らない街~トレノ~
次の瞬間、見上げるほどの高さにあったモンスターの頭が一瞬にして振り下ろされた。
たかが頭突きであっても、速さ重さが凄まじかったら尋常じゃない攻撃力になる。
「……っ!!」
その場に固まっていた私達はなんとか初撃を避けるも、流れるように尻尾を振り回したモンスターに吹き飛ばされる。
ケアルをかけようにも皆散り散りになってしまった。
皆、大丈夫かな……。
そう心配したけど、受け身をうまくとれたのかマーカスとスタイナーがモンスターに向かって飛び出した。
くねくねとうねるモンスターの体に順調に傷をつけていく。
苦しそうにモンスターが鳴き声を上げた。
けっこう効いてるみたい。
今さらだけどトレノで武器を新調したのか、スタイナーの使う剣が変わっていた。
大量の血に濡れたような、赤黒い刃。
見ようによっては不気味だけど、斬れ味は格段に上がったらしい。
スタイナーの攻撃がモンスターの体を斬り裂いていく。
ふいに、モンスターの頭上を何かが横切っていった。
次の瞬間にはモンスターがけたたましい叫び声を上げのたうち回る。
頭を……振り回してる?
横でお兄ちゃんが小さくガッツポーズをしていた。
なるほど、ナイフがモンスターの頭に当たったんだね。
しかもモンスターはそこが急所だったのか、尻尾をバタンバタンと揺らしてすごい痛がりようだ。
「ナイスっス、タイチさん」
さっきまでモンスターの周りを駆け回って翻弄していたマーカスが私達の元に帰ってきた。
「あとひと押しってところかしら?」
「最後まで油断は禁物ですぞ、姫さま!!」
暴れ方が尋常じゃないモンスターの近くは危険だとみたのか、スタイナーもこちらに引いてきたらしい。
改めて近くで見てみると、スタイナーの剣は本当におどろおどろしい。
ブラッドソードって感じ。
どこぞのダークヒーローが使ってそうだ。
そんなことを考えている間にダガーは皆にケアルをかけたらしく、淡い光の残像が辺りを漂っていた。
そんな光を貫くような氷が、唐突に私達の間を駆け抜ける。