第9章 眠らない街~トレノ~
「何とか先に行けたっスね」
不安定に揺れるトロッコはずんずんと霧の漂うトンネルを進んでいく。
ガルガントの鳴き声に混じって、ときおりモンスターの声も聞こえてくる。
襲ってこないといいけど……。
それにしても、乗り心地は正直あんまりよくない。
「これでアレクサンドリアに帰れるのね……」
アレクサンドリアまでどれくらいかかるんだろう。
気持ち悪くまではならないけど、ちょっと酔いそうだ。
後ろに目をやれば、もう来た方は見えなくなっていた。
「まさかこんな乗り物で帰ることになるとはね……」
「あ、相変わらずトット先生も変わり者なのであ……」
ぐわんと大きく足場が揺れた。
トロッコを運んでいたガルガントが急に止まったのだ。
「ど、どうしたのであるか?」
「何か、いやがってるみたい……」
鳴き声を上げてガルガントが後ずさりしている。
どうしたんだろう……
視線を前方にやると、その原因がわかった。
ダガーがトロッコから地面に飛び降りると、マーカスもそれに続いてくる。
「姫さま!?」
進路をふさぐように巨大なモンスターがこちらをにらんでいた。
ガルガントはこれにおびえてたんだ……。
他のモンスター達も目の前のやつが怖いのか姿は見せない。
「これが……原因!?」
スタイナーとお兄ちゃんも降りてくる。
目の前の蛇型のモンスターはその場から退く気がないのか、いっさいその場を動かない。
しかも私達をえさと勘違いしているのか持ち上げている上体をゆらゆらと揺らしながら小さく喉をならす。
見定めてる……?
「……来るっ!!」