第9章 眠らない街~トレノ~
慎重に足を進めていくと、一行のサイドからモンスターが攻撃を仕掛けてきた。
「うわっ!」
ダガーの隣で声をあげたのは、購入したばかりのメイスを緊張気味に構えていたお兄ちゃんだ。
羽虫を巨大化したようなモンスター。
鎌状になったモンスターの腕を、お兄ちゃんが受け止める。
その隙にマーカスがモンスターの体を一刀両断した。
「団体さまみたいっスね」
「何匹いんだよ」
「1、2……3匹は確実にいるわ」
羽虫型のモンスターの体が真っ白なので、漂う霧に紛れてしまう。
辺りには羽音だけがやけに響いていた。
とは言っても単体の強さはそこまでではないので、一匹ずつ確実に相手どっていけば大丈夫そうだ。
「タイチさんの練習にもってこいじゃないっスか?」
そう言うと、マーカスとスタイナーはお兄ちゃんの方に一匹だけいくようにモンスターをさばきはじめた。
「そこでガードして……右によける、そうっス、そこで攻撃!」
「はいっ!」
自分もモンスターを相手取りながら、お兄ちゃんに指示をとばすマーカス。
彼は意外と面倒見がいいらしい。
なんだかんだ言いながらも、お兄ちゃんのお願いに付き合っている。
お兄ちゃんも相手のモンスターもだいぶ疲弊してきた頃。
距離を取ったお兄ちゃんの放ったナイフでモンスターは地面に落ちると動かなくなった。
わっ、すごい。
ついに一人でモンスター倒しちゃったよ。
「このくらいの敵を一人で倒せるようなら、だいぶいいんじゃないっスか?」
「本当ですか!?」
「あとは場数を踏むことっスね」
ついにマーカスにお墨付きをもらったお兄ちゃんは嬉しそうだ。
すごいなぁ、お兄ちゃん。
野球を始めた時もそうだったけど、上達が早い。
コツを掴むのが上手いのかもしれない。
なんだかすっかりこの世界に適応してきている兄を見て、変に感心してしまう。