第2章 家出騒動
物凄い風圧にローブがバタバタと音を立てている。
風を顔面で受け止め、目が開けられない。
こ、怖い!!
命綱なしのバンジージャンプみたいなもんだよ、これ。
飾り紐にターザンロープよろしくぎゅっと掴まって落下する私。
地球の遊具なんて本当に遊びだったんだと痛感。
ガクンとロープが張って腕が震えた。
「ひいぃぃいい!!」
ブルリと足元から鳥肌が駆け上った。
グローブを付けていてよかった。
そうじゃなかったら、手汗で滑り落ちていたかもしれない。
ふと後ろを見ると、イケメンくんも同じように紐を外して飛び下りてきていた。
特に怖がっている様子はない。
自然に、大胆に、飛び下りてきた。
私しか見ていない。
こういうことには慣れてるのかな。
すごい、度胸ある。
なんて考えている暇はなく。
劇場艇の屋根が目前まで迫っている。
幸運なことに楽団達のいる建物の屋根は柔らかく、私の身体を優しく受け止めてくれた。
「はぁああ…………」
柔らかい屋根に身を預けて深く息をはく。
怖かった……
か弱い地球人には、こんなデンジャラスなのは心臓に悪いよ。
こんな調子じゃ、ガーネットの代わりなんて務まらない。
でも、怖いものは怖い。
なんとか身体の震えを止めたくて、身体にぐっと力を入れた時。
隣の方からガッシャアアアン!! と凄まじい音が聞こえてきた。
え、何事!?
思わず首を伸ばして様子を見ると、劇場艇についた……あれはなんだろう、装飾品? 機械? から、鎧を着た誰かの下半身がのぞいていた。
大胆にもそこに誰かが頭を突っ込んでいるらしい。
ジタバタと足をばたつかせている。
あれは……もしかしてスタイナー?
私が塔から飛び下りたのを見て、彼も追いかけてきてくれたのだろうか。
体からふっと力が抜けた。
そうだ、私はガーネットのためにがんばるって決めたんだ。
息を吸って吐く。
うん、もう大丈夫。
私は楽団のフロアに下りようと、屋根の隙間を探し始めた。