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王女様に祝福を【FFIX】

第9章 眠らない街~トレノ~




宿屋でしばらく休んでから、トット先生の言っていた塔を訪れる。

木製の扉に鍵はかかっておらず、すんなりとドアノブは回った。
 

螺旋階段を上れば、アーチ状にくり抜かれた空から赤く大きな月が私達を見下ろしている。

 
『わぁ、月が……』
 
 
月が綺麗だ……って、そんな感じの愛の言葉があったよね。

この世界には青と赤、二つの月がある。

その偉人さんがもしこの世界にいたとして、それぞれの月に別々の意味の言葉を詠んだりしたのだろうか。
 

「月……赤いんだな」
 
 
感慨深そうに呟いたのはお兄ちゃんだ。

その顔はほのかな赤い月明かりに照らされていて、やっぱりここは地球じゃないんだと何気なく思った。
 



 
「おお姫さま! すみませぬな、このようなむさ苦しいところまで御足労いただいて……」
 
 
塔のてっぺんまで上った私たちを迎えたのは、えんじ色のローブを揺らして振り返るトット先生だった。

明るい場所で改めて見れば見るほど、トット先生は学者さんっぽい。

大きなくちばしの上にちょこんと乗った小さな丸メガネもそうだし、左右にもっさりと生えた口ひげもいかにも学者さんな雰囲気。

 
「トット先生はここにお住まいなのですか?」


ダガーの視線の動きに合わせて見てみれば、ここはそこそこの広さの移住空間が広がっている。

ところどころに本の山ができていて、これまた学者の家って感じ。
 

「アレクサンドリアを離れ、研究に金を出す物好きを探して転々としておりました……そして行き着いた先がここトレノというわけでしてな」
 
 
トット先生はその丸メガネの奥の小さな目を優しげに細める。

 
「しかしお美しくなられた……再びお目にかかることができ、このトットもうれしゅうございますぞ」



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