第9章 眠らない街~トレノ~
「それで……そのポッポってのが白金の針をくれるってんだな?」
「……トットっス」
バクーは大きくくしゃみをすると、鼻をこする。
「トットだかトントンだか知らねえが、このタンタラタラス団がお情けをかけられるたあな」
あれから私達は同じルートをたどって、元の宿屋のような場所まで戻ってきていた。
トット先生のおかげか、変な騒ぎにはならずにすんでそれはよかったのだけど。
ちょうど今、ボスであるバクーへマーカスが事の経緯を説明し終わると、バクーはやっぱりというか何と言うか、面倒くさそうに息を吐いたのだ。
「まあいい……それじゃあまだ、お姫さまのおもりは終わんねえってこったな」
「まだ終わんないっスか……」
「お姫さまがいなけりゃ、おめえなんぞに白金の針はくれねえだろ?」
マーカスが小さく息を吐く。
なんという面倒くさそうな顔!
この人達、お姫さまに向かってずいぶんな態度じゃなかろうか。
……ってあれ?
もしかしてスタイナーの考え方に似てきてる?
私が軽く冷や汗をかいていると、バクーがこちらを振り返った。
「てことだ、お姫さまよ。白金の針のためにそのチッチの所まで頼むぜ」
「言われなくてもそうするわ」
「ま、とりあえず一休みしてから行きな……そのピッピもそうそうすぐは準備できねえだろうしな」
バクーは最後までトット先生の名前を覚えることなく、この建物から出ていった。