第8章 遭遇
ゆるゆると動く視界の中で、額を押さえるお兄ちゃんの姿が映る。
「タイチ! 怪我は大丈夫?」
立ち上がるダガーを見て、お兄ちゃんは目に見えてほっとした顔をした。
「よかった、ダガーちゃん無事だったか」
「わたしの心配より、タイチこそなかなか目が覚めないから心配したのよ」
「……それは悪かった」
ダガーの勢いに若干のけ反るお兄ちゃん。
なんだか思ってたより元気そう。
「それより、あの時はごめんな……俺、思った以上に弱いみたいだ」
お兄ちゃんは情けない顔をすると、俯く。
あの時っていうと、3号と対峙した時だろうか。
ダガーを守りきることができなかったこと、気にしてるのかなぁ。
私はお兄ちゃんが助けに来てくれただけですごく嬉しかったけど。
「俺、だめだな。敵を前にしたら想像以上に足がすくんじゃって、全然動けなくて……そのせいでダガーちゃんにも危険な目に合わせちゃうし、最悪だ」
「そんなこと……戦闘がはじめてだなんて思えないぐらいに戦えてたわよ? それに、あれはそのあたりにいるモンスターよりも手強いものだから……」
「それじゃあだめだ」
お兄ちゃんは顔を俯かせたまま、うわ言のように呟く。
「このままじゃ、だめだ……」