第8章 遭遇
「まもなく~、アレクサンドリア駅に到着いたします」
車掌さんのアナウンスに、パチリと目が覚めた。
私、いつの間にか寝てたんだ。
そういえば、お兄ちゃんは起きたかな……?
そう思って視線を動かそうとして、気づく。
再び身体の主導権がダガーに戻っていた。
彼女の身体に仮住まいさせてもらってからかれこれ二週間は経っているけれど、起きぬけに拍子抜けするようなこの感覚にはまだ慣れない。
ただ、入れ替わる条件みたいなものはわかってきた。
寝た時と気絶した時のツーパターン。
突拍子もなく入れ替わることは基本的にはないと考えていい。
そういうわけだから、お互い二日にいっぺんは身体を動かすことになるんだけど……。
『そろそろ到着ね!』
ダガーが腕を伸ばしながら、弾んだ声を出す。
それに合わせて私も相づちを打つけれど、その内ではモヤモヤとした気持ちが貼り付いて取れないでいた。
ここ最近、私が身体を動かすことが極端に少なくなっていた。
私に主導権が回ってきたとしても、先ほどのような眠気がやってきてすぐにダガーに変わってしまう。
元のようにダガー自身が身体を動かす時間が増えることを喜ばしいと思う一方で、不安を感じる自分もいた。
「ところでタイチは……」