第8章 遭遇
『人違いじゃなくて? だって、レイナはこの世界の人じゃ……』
『うん、なんでここにいるかはわからないけど、でも絶対に人違いなんかじゃない。あの人は、私の知ってるお兄ちゃんだよ』
ダガーは『そうなの……』と呟くとそれっきり黙ってしまった。
どう思ったかな。
彼女の表情を見ることができない今、雰囲気で考えを読みとることもできない。
それならいっそのこと聞いてしまおうか、と私は思いきってみる。
『タイチが私のお兄ちゃんだって知って、ダガーはどう思った?』
『わたしは別に……ただ、レイナは言わなくていいのかなって。わたしの中にいること』
それも考えた。
お兄ちゃんに私の存在を言おうかって。
でも、お兄ちゃんが人生で初めて好きな人ができて(たぶん)、せっかく今アタックしているのに、その事実を言ってしまったらきっと邪魔になってしまうんだろうな……とか考えると、どうにも言う気になれない。
ダガーの苦笑が漏れ聞こえた。
『レイナって案外理屈っぽいわよね』
『え!? 私理屈っぽい? うそっ!』
『なんてね、タイチのことは……ちゃんと考えるから心配しないで』
『えー……まあ色々言っちゃったけど、お兄ちゃんのことは嫌だったらバッサリ振っちゃっていいから!!』
私がそう言うと、ダガーは再び笑った。