第8章 遭遇
緩やかな坂道をくだる鉄馬車が心地よいリズムで揺れている。
『ねぇ、レイナ……』
ダガーが私に声をかけてきたのは、3号との戦闘が終わって少ししてからのことだった。
ついにきたか……と彼女の次の言葉に身構える。
『さっき、タイチのことを“お兄ちゃん”って呼んでたわよね……それって、どういうことなの?』
ああ、きた……。
すっかり説明のタイミングを逃していた事が、私がお兄ちゃん呼びしたことによって浮き彫りになってしまっている。
当の本人はというと、気絶したままいまだ起きる気配はない。
少し心配だけど、スタイナーいわく麓の駅に着く頃には起きるらしいので、とりあえずは安心。
それはさておき。
うーん、ただ説明すればいいんだよね……でも……。
お兄ちゃんがダガーに告白して、結局その返事はうやむやになっている。
ダガーはお兄ちゃんに告白されて嫌悪感は抱いてなかった。
つまりお兄ちゃんにもチャンスはあるってこと。
タイチが私のお兄ちゃんだと知って、ダガーの気持ちに変化があったら、と思うと少し言いづらい。
やっぱりお兄ちゃんには幸せになってもらいたいし。
それはもちろんダガーにもだけど……。
なんて、悩んでても仕方ない。
こうやってうだうだ考えていることも、ダガーには筒抜けなわけで。
『ごめんね、言うのが遅れて。タイチって、私のお兄ちゃんなの』