第2章 家出騒動
息を切らせて走りながら、チラリと後ろを振り返って驚いた。
追いかけてくる金髪の兵士が、いつの間にか着ていた鎧を脱いでいたのだ。
そして脱いだことによってあらわになった、彼の背後で揺れる物に目が釘付けになる。
尻尾だ。
猫みたいな、髪色と同じ金色の毛が生えた尻尾には見覚えがある。
あの舞台俳優さんだった。
イケメンの!
顔を見た時になんで気づかなかったんだろう。
鎧を着てたからかな。
とにかく理由は分からないけど、あのイケメン俳優さんたちに絶賛追いかけられ中の私達。
あの人達、舞台の本番中じゃないの!?
兵士じゃないなら、なんで追いかけてくるのか。
ガーネット姫だと気づかれて、さすがにもうナンパってことはないだろう。
加えて、どうやら私がいなくなったことがお城の人達にもバレたようで、城中が騒がしくなっていた。
あっちこっちで城の兵士たちがさらに忙しく走り回っている。
どうしよう……
せっかく順調だと思ってたのに。
フードの前を掴みながら走る私が焦っていると、ガーネットの声が頭に響いた。
『あっレイナ、そっちは行き止まりだわ!』
ええっ、そういうことはもっと早く言ってくれないと!
私は行き止まりの道を入ってしまったらしい。
後ろからは金髪の彼が迫ってきていて、もう戻るわけにもいかない。
ああもう、行けるとこまで行くしかない!
螺旋階段になっている塔を、私はヤケクソ気味に上っていった。