第8章 遭遇
「ぐぅっ!」
どこからかぐるぐると円を描きながら飛んできた刃が、3号の肩を切り裂いた。
今度は空気を切り裂くように一直線に、二本、三本と3号の腕と体に突き刺さる。
その軌道は手裏剣のように見えたけれど、目を凝らして見たそれはナイフだった。
「大丈夫か!?」
駆け寄る足音に目を向けると、血相を変えたお兄ちゃんがこちらに駆け寄ってきていた。
急に抱き起こされると頭がくらりとして、意識が飛びそうになって、耐える。
「ダガーちゃん、血が……!! あぁっと、ポーション! これだよな!?」
口元から注がれる液体をかろうじて飲み込むと、体がずいぶんと楽になった。
おそらくこめかみから流れる出血も止まったようで、お兄ちゃんが目に見えてほっとした顔になった。
ぎゅうっと抱きしめられる。
「よかったダガーちゃん、生きてる……助けるのが遅れてごめんな」
お兄ちゃんの詰まるような声に、思わず私まで泣きそうになった。
お兄ちゃん……助けに来てくれたんだ。
あんなバケモノ相手に、怖かっただろうに。
戦う手段なんてろくに持ってないくせに。
ふわりと届く匂いは懐かしいもので、私は安心から体の力が抜けた。