第8章 遭遇
「ぬぉお!!」
巨大な稲妻が走った。
バリバリと鼓膜を揺るがす豪音と共に、身体中の神経が焼き切れるような感覚。
残った意識をかき集めて、回復の呪文を唱える。
「ケアルッ!」
温かい光が辺りに充満し傷が癒えていくと、スタイナーとマーカスが飛び出した。
はじめはスタイナーの一撃。
これは3号の杖に防がれたけれど、逆方向からのマーカスの剣筋が3号の脇腹をとらえた。
「ぐぅッ……」
苦しげな声を上げる3号に、二人の追撃は止まらない。
3号は魔法を混じえた防戦をするけれど、二対一と分が悪そうだ。
ボロボロでもはやその機能を使えないのか、3号は空中に浮くこともせずに大きく後ろに転がると杖を両手で握りしめた。
ぶつぶつと呟くだけで動こうとしない3号を二人は好機ととらえたのか迫る。
戦う前から満身創痍だった3号。
これでトドメかと思われた、その時だった。
「ブレイズ!」
3号に迫る勢いのまま、二人は氷の彫像へと姿を変えてしまった。
剣先は目標まで残りわずかのところで止まっている。
3号がニヤリと笑った気がした。
『まずい! ダガー、プロテスとシェルを!』
「ええ、わかってるわ!」
急いでシェルの呪文を唱えるダガーだったけれど、こちらに狙いを定めた3号の行動は思いのほか速い。
ダガーの体に光のベールがはるのと、頭上に巨大な雷の発生源が出来るのはほぼ同時だった。
「うっ……!」
体が焼けるような痺れ。
開戦直後のものに比べればましだけれど、それでもダメージがないわけではなく。
ダガーは軽く足元をおぼつかせると、自身にケアルをかけた。
気づくと、3号の全身ほどの長さの杖が目の前にあった。
とっさのことに避けることもできず、まともにこめかみに受けてしまうと、ぐにゃりと、視界が歪んだ。
だめだ……意識が、遠のく……。
ふっと、感覚が現実から離れていくのを感じた。
…………