第8章 遭遇
外に出ると、硬い砂粒の混じった風が流れていた。
ここら一体の土は植物が生えるのに適さないのか、周りに木々はない。
緑といえば地べたの隅に苔が生えているくらい。
鉄馬車の影から青い翼がのぞくと、やがて姿を現したのはカーゴシップを襲った黒のワルツ3号だった。
「何があったっスか!?」
気になって追いかけてきたらしいマーカスも、私達の視線に気がついて目をみはる。
3号はこちらに近づいてくるのだけどその足取りはおぼつかないもので、一歩足を踏み出すたびにその身体はガクリとよろめく。
その姿は、とんがり帽子のオバケと形容されるのも頷けた。
南ゲートでの大爆発をまともに受けて、こうしてまだ動けているなんて……。
「ヒギュッ……にンム……ダッかン、がーネッとひメ……イかしテ……」
「あれは……たしかカーゴシップで現れた……」
「おのれバケモノ! 今度こそ剣のサビにしてくれるわ!」
「まって、スタイナー!」
剣を抜き放つスタイナーを押し留め、ダガーは3号に自ら歩寄る。
「ねえ! あなたに聞きたいことがあるの! いったい何のためにわたしを……?」
「姫さま! 危険です。おさがりください!」
「ヒギュッ……にンム……ダッかン、がーネッとひメ……イかしテ……」
「もうムダっス! 何を言っても通じないっス!!」
「そんな……」
「ジャまスるものワ……しょウキョ!!」
私達を見定めたように、帽子とコートの隙間から白く二つの目が光る。
それが戦いの合図となった。