第8章 遭遇
ダガーはしばらくバツが悪そうにしていた。
リンドブルムでジタンと言い争ったことを思い出しているみたいだ。
お兄ちゃんも相変わらず何事か考え込んでいるようで口をつぐんでいる。
まぁ、彼の考えていることといえば、おおかたダガーのことだろうけど。
座席にどっかりと座ったマーカスへ、ダガーは足を進める。
「ねえ、マーカス……その……わたしにも手伝わせてもらえないかしら?」
「何をっスか?」
「わたしにも責任があったわけだし……その……白金の針を手にいれるのを……」
マーカスは膝に体重をかけていた上半身を持ち上げて、こちらを見た。
その口元はめんどくさそうに曲がっている。
「そんなの必要ないっスよ……俺達だけで十分っス……」
「でも人数は多い方が……」
突然、鉄馬車が急ブレーキをかけたようで、ガクンと身体が前のめった。
「な、何事であるか!!」
「故障かもしれません! 見てきますのでしばらくお待ち下さい」
車掌が鉄馬車から降りたと思うとすぐに外から悲鳴が聞こえてきて、かなり慌てた様子の車掌が車内に戻ってくる。
「オバケです! とんがり帽子のオバケが線路にとび出して来て……」
「……とんがり帽子!!」
ダガーはスタイナーと顔を見合わせると、鉄馬車を飛び出した。