第8章 遭遇
「それでは出発いたします」
ひときわ大きくエンジン音が鳴り響くと、鉄馬車はゆっくりと動きはじめた。
ガタリとした横揺れに、ダガーは座席の背もたれを掴む。
「ねえ……どうしてマーカスはトレノに?」
声をかけると、向こうを向いていたマーカスはこちらへ振り返った。
「兄キを助けるためっス」
「アニキって?」
「俺がアニキって呼ぶのは、ブランクの兄キだけっス!」
魔の森で私達を助けるために石になってしまったブランク。
額あてで上向かせるような髪型は、髪色も相まって燃える炎のようだった。
そんな髪型とは反対に、彼はクールで仲間思いな性格をしていたと記憶している。
「……石になった兄キを助けるため、俺たちはあちこち情報を集めたっス。そして、トレノに“白金の針”という、どんな石化も治すアイテムがあることを知ったっス」
「それじゃシナはどうして?」
「シナさんはその情報をタンタラスのアジトに伝えるため、リンドブルムに向かったっス」
彼らとの再会はアレクサンドリアから劇場艇で逃走した後、魔の森に墜落して以来だ。
今考えてみると、脱出不可能と言われていた魔の森から逃げ延びてこうしてまた会えたのはすごいことだと思えた。